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【エピソード2】1話 土曜のバベル | 別れさせ屋の老舗アクアグローバルサポート

【エピソード2】1話 土曜のバベル

2023-04-17

6月。
うだるような暑さではないが、しかし、やはり暑いものは暑い。スーツに身を包み、私は船橋駅で楓さんと待ち合わせていた。
私は東西線に乗りながら、先日の土曜のことを思い出す。

*

じつに不愉快である。サンドに金を入れても入れても、なにも起こらない。
時折、ガラの悪いねーちゃんが出てきては、チャンスを連呼するが、しかし、結果なにも起こらないということは、チャンスではあったが、失敗したのだろう、と私は納得した。

隣のいかにもダメっぽい若い男は、ずっと私が見ている画面とはちがう画面で、右だ、左だ、中だ、とナビゲーションに従い、次々ベルを揃えていく。たまに、派手に銃が鳴り、赤や青の7が揃う。

いったいこれは本当に同じ台なのか? なにかコツがあるのか、と思いながら、私はちらちらと横目でそれを見る。たまに目があって、男はじつに優越感満載の視線を私に返す。

正直、私の私生活がいままさに最高潮でなければ、私は途中で帰っていただろう。
その隣で、事件は起こった。

男の逆隣で、若いお姉さんがまちがって男のサンドに札を入れた。まあ、よくあるまちがいではあるが、端から数えていけば、どちらが自分のサンドであるかは、わかるだろう、常考。と私は悪態をついていただろう。

--これが仕事だと、わかっていなければ。

「あ、お姉さん、それ、ぼくのです。お姉さんのはあっち」と気さくな感じで男は言った。
なんだ、意外といいやつっぽいではないか、と私は思った。

「すみません。初めてで、わからなくて……」とすまなさそうに、女性は答える。
桐田かなえ工作員である。

工作員は、飯田橋探偵事務所の仕事だけをしているのではない。中には、ほぼそれだけで暮らしているという手練の戦士もいるにはいるが、タレント志望だったり、なんの関係もない事務職の副業だったり、アルバイト掛け持ちだったり、様々だ。

今回の件をいっしょに担当している楓さんも工作をするし、持田さんだって工作をする。依頼者、対象、状況を考えて、ベストな人選をするのも別れさせ屋の大事な仕事である。と社長が言っていたので、そのまま受け売りしておく。

私は死んだ魚のような目になって、2枚目の福沢諭吉をサンドに入れた。

隣の男は相も変わらずベルを揃え続け、ドル箱にメダルを移し、積み上げていく。まさにバベルの塔である。私のような運の弱い人間には築くことのできない、豪運の持ち主のみが築きえる欲望と羨望の塔だ。というか、いい加減に、私にもアタリをくれ。仕事中とはいえ、暇すぎてどうしようもない。

と、男の逆隣で、派手な音が鳴る。ものの数分、まさにビギナーズラックというやつである。むろん、くるくる回るリールを初心者である彼女が揃えることなどできるはずもない。

「いいっすよ。ここ、狙うんすよ」と男が教えてやっているのが聞こえる。
パチンコ屋はなかなかうるさいので、ふつうの会話でも、耳打ちか、声を張るしか方法がない。初対面の男女が耳打ちはなかなかハードルが高いため、必然、私にも声は聞こえるわけである。

赤い7を揃えて数回リールを回すと、けたたましい音がなる。
それはフリーズと言って、ビッグボーナス中ならおよそ6000分の1確率で発生する演出である、という旨の説明を男がし、私は6553分の1だ、とココロの中で訂正した。まったく、許しがたい。お願いだから、私の台で起こってはくれないか。

私の積み上がる投資とは逆に男のドル箱は積み上がっていく一方で、桐田さんの台もそこそこ出ていた。私の台はやりうんともすんとも言わない。男と桐田さんは、桐田さんの台でなにかが起こるたびに話し、途中で桐田さんが缶コーヒーを1本、男におごった。これもパチンコ屋ではよく起こる事象である。取り立てて珍しいことではない。

それからじつに3時間、男の台はずっとコインを増やし続けたが、さすがにそろそろ終わりが見え始めていた。時間もちょうどいい。これはここで止めるだろう。私はそれを男に気づかれぬよう、桐田さんに合図し、桐田さんは男より一足早く遊戯を終了した。

私は男が店を出るまで遊戯続行である。大敗は決していてプライベートなら、すでに2時間前に家に帰って、華麗にふて寝を決め込んでいるパターンであるが、プライベートではないので致し方ない。

桐田さんは男にお礼を言って、席を立ち、一足先に駐車場へ行く。そこで男が店から出てくるまで待機である。このあと、男が店を出ると、不審者がついてきている気がする、と困惑顔の桐田さんが男へコンタクトすることになっている。

【エピソード2】2話 夫妻の仔細

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