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【エピソード2】3話 娘とカレシ。 | 別れさせ屋の老舗アクアグローバルサポート

【エピソード2】3話 娘とカレシ。

2023-04-17

<束縛ムスメ>さんは、可愛らしい女性だった。22歳だと言うが、ひょっとしたら10代でも通るかもしれない、程度の幼さがある。
いちばん特徴的なのは目だ。風貌はほんわりとしているが、気の強そうな目をしている。
そのことを楓さんに告げると、あ、そう? と言われた。
あ、そう、とはまたずいぶんな、と私は若干しょげた。

「いや、そんな簡単にしょんぼりするなよ」と楓さんは笑った。
楓さんは今回の件で、指導してくれる女性の先輩だ。

「それで、ただスロット打てばいいんですか?」
「そう。ある程度はわかるんだよね?」
「ある程度なら」と私は答えた。

最近は打っていないので、最新機種になるとすこし自信はなかったが、男がよく行くパチンコ屋はさほど流行っておらず、最新機種だらけのラインナップでもないので、なんとかなりそうだった。
<束縛ムスメ>さんの身辺を調査してわかったことは、彼女がランジェリーショップに勤めていて、彼氏がセレクトショップの雇われ店長、ふたりはいっしょに生活していて、という程度だった。

依頼者の佐賀夫妻はこの娘の彼氏をひどく嫌っている様子だったが、調べてみるとそれほど悪い男ではなさそうだ。浮気もなく、仕事も休まない。休日は<束縛ムスメ>さんを送り迎えまでしている。
仕事場と同棲宅を往復するのがほとんどで、極稀にセレクトショップのオーナーに呼び出されて飲みに行く。
飲み屋を狙う、というプランも考えられたが、あまりに不定期なので、より確実な彼の趣味から切り崩していく。
彼は休日、<束縛ムスメ>さんを送り、迎えに行くまでのあいだ、スロットを打つ。
これが彼の休日の過ごし方である。
というわけで、私はスロットを久しぶりに打つことになったわけである。

*

私は、<束縛ムスメ>さんの彼氏が席を立つのを確認して、トイレに行き、桐田かなえ工作員と楓さんにメールを打つ。
それから、喫煙スペースで1本タバコを吸って、ゆっくりと店を出た。視界の隅で、桐田さんと彼氏がなにやら話しているのを確認する。
おそらく手筈通り、なんの問題もない。
桐田さんは、駅へと歩き始めるが、しかし、うしろから誰かがついてきているような気がする。信号を渡ったり、振り切るように歩いたが、どうもつけられているようだ。怖くなって、そう離れていなかったので、人通りのある道をまたこのパチンコ屋まで戻ってきてしまった。今日は車に乗ってきてないし、駅まで送ってもらうことはできないだろうか? と。
面識がなくとも、なかなか断りづらい状態である。

おまけに桐田さんは、<束縛ムスメ>さんとはまたすこしちがうタイプではあるが、なかなかの美人である。
しかも、店内で桐田さんの顔を男は認識している。となれば、そのあと話しかけられたとき、ぐっとハードルが下がった状態だ。まったく知らないひとではなくなるからだ、と持田さんは言っていた。
つまり、断る理由があろうか、いや、ない。という完璧な反語の完成である。
かくして、彼氏は笑顔で、桐田さんを車に乗せ、駅の方へ向かった。
<束縛ムスメ>さんの勤務先は駅から車で5分程度の距離だということも調査済である。

私はよく考えるとスロットのやめどきを目配せした程度でなにもしていないような気もするが、いや、これは仕事だ、となんだか心持ちやりきったようなテンションになって、楓さんに電話をかけた。
「もしもし、大橋です」
--おつかれさま。どう? うまくいったかしら?
「はい。だいじょうぶだと思います」
--じゃあ、今日のところはそれでオッケー。あとは桐田ちゃんからの報告を待つ、と。
「これでしばらくは桐田さんに距離を詰めてもらって、って感じですかね」
--そーね。まあ、桐田ちゃんもそこそこ長いから、だいじょうぶだと思うよ。
「わかりました。とりあえず、今日はこのまま帰っていいすか?」
--こっちはいいけど、さっきから持田さんが、<サイエンティスト>さんの件で大橋が資料よこさないって嘆いてるけど、そっちはいいの?

なるほど。
深刻である。その仕事も来週中にはとりかかることになっていたのだ。
それがまだノータッチだったことをすっかり忘れ、もとい、止むに止まれぬ事情によりペンディング状態となっていたことを私は思い出す。
「いや、それは<束縛ムスメ>さんのほうがひと段落してから、とりかかります、と持田氏によしなにお伝えくだされ」

--まあ、私はいいけど。私はね。
とにやけた楓さんの表情が浮かんでくる。
「……一旦、帰社します」と私は仕方なしに答えた。
別の仕事が終わってないとなれば、仕方がない。今日はご飯をいっしょに食べる約束をしていたのだが、謝ろう。

いや、ちょっとさらりと流しすぎた。
今日は最近できた彼女が私の部屋に来て、ご飯を作ってくれるという約束があったのだが、仕事を優先するスーパー探偵(見習い)の私としては、できたばかりの彼女に侘びを入れてでも、帰社して仕事をするべきだという苦渋の決断をした。

なるほど、我ながらなかなかのプロフェッショナル意識である。控えめに言って、渋い。なにせ苦渋の決断である。それをする私が渋くないということがあるだろうか? いや、シブいに決まっている。

【エピソード2】4話 プリズナー

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