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【エピソード2】7話 あるいはロマンと聖域の話 | 別れさせ屋の老舗アクアグローバルサポート

【エピソード2】7話 あるいはロマンと聖域の話

2023-04-17

19時、<束縛ムスメ>さんの仕事が終わる。
終わる時間はチェックしてあったが、京子さんはたまたま、というように現れ、いつものように、「あら、このブラ可愛いわ」的な会話を交わし、上がりなんだったら、お茶しない、とナチュラルに切り出した。
……と楓さんから聞いた。

<束縛ムスメ>さんの勤務先はランジェリーショップである。私が近づけぬ聖域である。
すぐ近くのファーストフード店で、私はすでに席をとって楓さんを待っていた。
彼氏が迎えに来れるのは、早くて20時前くらいだ。<束縛ムスメ>さんのシフトは19時から22時のあいだでバラバラだが、彼氏の店は19時に閉まる。従って、19時のシフトのときだけ、<束縛ムスメ>さんは彼氏が迎えに来るまで小一時間、時間を潰す。
そこであれば、そこそこ会話を交わすようになっていた京子さんの誘いをそうそうは断らないだろう、という読みであった。
「お、待たせたね」と楓さんは言った。
店内はまばらにひとがいたが、みなひとり掛けのカウンターで、2人掛けのテーブルはすべて空いていた。窓際とそのとなりをひとつ空け、私は座っていた。楓さんはそこにとなりのテーブルをくっつけた。2人掛けのテーブルは6コしかない。これで自ずと岬さんと<束縛ムスメ>さんは私たちのとなりに座ることになるわけである。
「もう来ます?」と私は周りの客に聞こえないよう言った。
こくり、と楓さんが、うなづく。
「さて、大橋くん、じゃあ、君の新しい彼女について、話してもらおうか」と楓さんはニッコリと笑んだ。

それ以外に適切な話題があるのではないか? 世界経済状況、あるいは格差社会への構造的不満、もしくは辺境地のロマン、それほどご大層でなくても、最近見た映画、読んだ本、今日はいている下着の柄。と私は思ったが、逃れられぬ雰囲気、逃がしてもらえぬ雰囲気をひしひしと感じた。
確実に冷やかされる。
是非に及ばず。
私が苦しみに満ちた表情で、「どこから話しますか?」と尋ねたとき、岬京子工作員と、<束縛ムスメ>さんが、窓際の席に腰掛けた。

*

私は当たり障りない部分で抑えようとするが、楓さんはそれを許さない。はぐらかそうとしたところは、すべて指摘され、赤裸々告白をさせられる。なんの罰ゲームだ、これは。
となりはとなりで、なんだかよくわからない話題で盛り上がっている。なんの話題なのか、さっぱりわからないが、盛り上がっているのでいいのだろう。
15分ほど、その状態は続いた。19時半。もういつ彼氏があらわれてもおかしくない時間である。
電話が、京子さんにかかる。
「あ、ごめん、ちょっといい?」
「うん、いいよー」
などという会話が聞こえた。
「それで、どっちから? ねえ、どっちから?」と目の前の女性はニヤけて尋ねる。
「え、ええ、と。どっちだったかな」と私は答える。
むろん自慢の彼女であるが、やはり恥ずかしいものがある。
「待ち合わせてる子、ついたらしいから、呼んでいい?」
「あ、わたし、外そうか?」
「いや、気にしなくて、全然。誘ったのこっちだし、お迎え来るまで暇でしょ? っていうか、彼氏見たい」
「そこかー。まあ、いいよ」
まんざらでもない様子である。
「なるほど、その態度、100%君からだね?」
「断言してるじゃないですか。いや、たしかにそうですけど」
「ほう。ということは、君は私に嘘をついたわけだな。覚えてないフリをするとは」
「いや、嘘とかって、そういうレベルじゃないじゃないですか」
このひとは、純粋に、愉しんでいる。
そこから5分が経ち、桐田かなえさんが合流、私は入店してからのこの20分間でもはや白旗状態であったが、しかし、ここから<束縛ムスメ>さんの彼氏が来て、修羅場が終わるまでが仕事である。
すでに私のプライバシーは火の車だ。おそらくあと1時間も続けば、燃えカスさえ残るまい。

【エピソード2】8話 可能性として、喫茶店の風景

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